≪トピックス≫ うっ血性心不全の患者さんに対して、中枢性無呼吸症やチェーンストークス呼吸を改善させるために、特殊なメカニズムで作動する陽圧式人工呼吸器【Heart PAP】(Respironics 社製)が開発されました。 この装置は CPAP 同様の鼻マスクを用いたものですが、心不全患者さんに認められる睡眠時無呼吸低呼吸および低換気を治療し、睡眠構築の障害や無呼吸低呼吸に伴う覚醒反応を著しく削減し、快適な眠りを可能にします。
2004年4月の健康保険改正により、慢性不全患者さんで、以下の条件を満足する睡眠呼吸障害を伴なう方 に在宅酸素療法が行なえるようになりました。 〔適応条件〕 「慢性心不全患者さんのうち、医師の診断により、NYHA III 度以上であると認められ、睡眠時のチェーンス トークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう)が20以上であるこ とが睡眠ポリグラフィー上確認されている症例」 1ヶ月の負担金は、酸素濃縮器装置(4620点)、携帯酸素ボンベ(880点)、および在宅酸素療法指導管理料 (2500点)です。(1点=10円と計算し、3割負担の方は合計の30%、1割負担の方は合計の10%を窓口で払う 必要があります)
睡眠呼吸障害には、 ■中枢性睡眠時無呼吸症候群、 ■閉塞性睡眠時無呼吸症候群、 ■混合性睡眠時無呼吸症候群、および ■肥満低換気症候群 があります。 この中の(1)のタイプの無呼吸症が慢性心不全の患者さんで良く認められます。 心不全患者さんや脳血管障害が中枢性睡眠時無呼吸を呈する場合には、 この呼吸様式(中枢性睡眠時無呼吸症候群)をチェーンストークス(Cheyne-Stokes)呼吸といいます。
約186年前から知られている周期性呼吸で、1818年にJ Cheyneが報告しました。うっ血性心不全患者さんや脳血管障害の患者さんでよく認められます。 特徴は無呼吸あるいは低呼吸が15〜20秒間続いた後、呼吸がゆっくりしかも浅く始まり、徐々に増大した(クレッシェンド)後減少し(デクレッシェンド)、再度無呼吸になるタイプの呼吸の仕方になります。 脳の呼吸中枢は、正常では血液中の炭酸ガス(CO2)分圧によって呼吸をするということがコントロールされています。慢性心不全の患者さんでは、覚醒時でも炭酸ガス分圧に対する脳の感受性が高く、過換気の状 態になっています。ところが睡眠中は、この感受性が少し回復します。このため、睡眠中はCO2を溜めないと (すなわち無呼吸になる)、呼吸が開始されないのです。
■慢性心不全患者さんには中枢性睡眠時無呼吸症候群が多い 安定した外来通院中の患者さんを対象にしたJavaheriらの81例の分析では、約40%に中枢性睡眠時無呼吸症候群を、約10%が主として閉塞性睡眠時無呼吸症候群であったといわれています。 ■炭酸ガス換気応答が亢進している 正常な人に比べて、CO2に対する呼吸中枢の感度が2倍くらいになっているといわれています。従って、昼間には過呼吸になっており、安静時ですでに一生懸命呼吸努力しています。従って、少し動いても(動くことにより筋肉でのエネルギー産生活動によるCO2の産生を生じる)、炭酸ガスを体外へ排出する呼吸活動が必要となり、容易に息切れを生じるのです。もちろん心不全による循環障害による部分もありますが。 ■無呼吸による低酸素血症は心・血管機能に悪影響を与えます 低酸素血症により、心筋への酸素供給が低下し、心臓の収縮機能・拡張機能に悪影響を与えます。また、低酸素血症は交感神経活性の亢進、エンドセリンなど、多くの神経内分泌機構を介して心機能に悪影響を与えます。さらに、低酸素血症は血管の炎症反応を促進することにより、冠状動脈を初めとする動脈硬化症を進展・増悪させます。 ■無呼吸に伴なう頻回の覚醒反応は自律神経異常を引き起こします 低酸素血症で乱された交感神経活動の亢進は、頻回の覚醒によりさらに交感神経活動を悪化させます。一般的には睡眠中は副交感神経が優位になるものです。昼間も夜間も、何時も戦闘モードでは、心臓はばててしまいます。
心不全に対する薬物治療が行なわれている上での無呼吸の治療には以下のようないくつかの選択枝があります ■CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法:鼻マスク法)治療 心不全患者さんでは、鼻マスク治療を行なっても、装着の不快感や違和感があり、治療の継続が非常に困難であることが多い。米国では、心不全患者さんにも積極的にCPAP治療あるいはBiPAP治療を行なっている。一般的にCPAPの継続使用率は、昼間の過眠など自覚症状を持つ閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんに高いことが言われている。 ■酸素吸入療法(経鼻式) ■心臓移植 ■薬物療法
心不全に伴なう中枢性睡眠時無呼吸症候群に対する夜間の酸素療法の効果は 無呼吸低呼吸の回数を減らします ■睡眠構築の改善(睡眠時間の延長、深い睡眠の増加、覚醒指数の改善)を認めます ■低酸素血症の改善を認めます ■昼間の運動耐容能(左室収縮能の改善)が改善します ■交感神経活性亢進の抑制や尿中ノルエピネフリンの低下をもたらします
以上より、心不全患者さんに対する睡眠時無呼吸症の酸素療法は ■左室の構造(リモデリング)に良い影響を与える ■QOLの改善が得られる ■入院頻度と死亡率を減少する ということが認められてきており、今後積極的に行なわれる治療の一つと考えられてきています。 但し、医療経済的には心不全が悪化して入院したときの治療を含めて考えると安いとはいわれていますが、現実問題として毎月の医療費が結構かかりますので、主治医の先生と良く相談してみて下さい!
≪トピックス≫
うっ血性心不全の患者さんに対して、中枢性無呼吸症やチェーンストークス呼吸を改善させるために、特殊なメカニズムで作動する陽圧式人工呼吸器【Heart PAP】(Respironics 社製)が開発されました。
この装置は CPAP 同様の鼻マスクを用いたものですが、心不全患者さんに認められる睡眠時無呼吸低呼吸および低換気を治療し、睡眠構築の障害や無呼吸低呼吸に伴う覚醒反応を著しく削減し、快適な眠りを可能にします。
2004年4月の健康保険改正により、慢性不全患者さんで、以下の条件を満足する睡眠呼吸障害を伴なう方
に在宅酸素療法が行なえるようになりました。
〔適応条件〕
「慢性心不全患者さんのうち、医師の診断により、NYHA III 度以上であると認められ、睡眠時のチェーンス
トークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう)が20以上であるこ
とが睡眠ポリグラフィー上確認されている症例」
1ヶ月の負担金は、酸素濃縮器装置(4620点)、携帯酸素ボンベ(880点)、および在宅酸素療法指導管理料
(2500点)です。(1点=10円と計算し、3割負担の方は合計の30%、1割負担の方は合計の10%を窓口で払う
必要があります)
睡眠呼吸障害には、
■中枢性睡眠時無呼吸症候群、
■閉塞性睡眠時無呼吸症候群、
■混合性睡眠時無呼吸症候群、および
■肥満低換気症候群 があります。
この中の(1)のタイプの無呼吸症が慢性心不全の患者さんで良く認められます。
心不全患者さんや脳血管障害が中枢性睡眠時無呼吸を呈する場合には、
この呼吸様式(中枢性睡眠時無呼吸症候群)をチェーンストークス(Cheyne-Stokes)呼吸といいます。
約186年前から知られている周期性呼吸で、1818年にJ Cheyneが報告しました。うっ血性心不全患者さんや脳血管障害の患者さんでよく認められます。
特徴は無呼吸あるいは低呼吸が15〜20秒間続いた後、呼吸がゆっくりしかも浅く始まり、徐々に増大した(クレッシェンド)後減少し(デクレッシェンド)、再度無呼吸になるタイプの呼吸の仕方になります。
脳の呼吸中枢は、正常では血液中の炭酸ガス(CO2)分圧によって呼吸をするということがコントロールされています。慢性心不全の患者さんでは、覚醒時でも炭酸ガス分圧に対する脳の感受性が高く、過換気の状
態になっています。ところが睡眠中は、この感受性が少し回復します。このため、睡眠中はCO2を溜めないと
(すなわち無呼吸になる)、呼吸が開始されないのです。
■慢性心不全患者さんには中枢性睡眠時無呼吸症候群が多い
安定した外来通院中の患者さんを対象にしたJavaheriらの81例の分析では、約40%に中枢性睡眠時無呼吸症候群を、約10%が主として閉塞性睡眠時無呼吸症候群であったといわれています。
■炭酸ガス換気応答が亢進している
正常な人に比べて、CO2に対する呼吸中枢の感度が2倍くらいになっているといわれています。従って、昼間には過呼吸になっており、安静時ですでに一生懸命呼吸努力しています。従って、少し動いても(動くことにより筋肉でのエネルギー産生活動によるCO2の産生を生じる)、炭酸ガスを体外へ排出する呼吸活動が必要となり、容易に息切れを生じるのです。もちろん心不全による循環障害による部分もありますが。
■無呼吸による低酸素血症は心・血管機能に悪影響を与えます
低酸素血症により、心筋への酸素供給が低下し、心臓の収縮機能・拡張機能に悪影響を与えます。また、低酸素血症は交感神経活性の亢進、エンドセリンなど、多くの神経内分泌機構を介して心機能に悪影響を与えます。さらに、低酸素血症は血管の炎症反応を促進することにより、冠状動脈を初めとする動脈硬化症を進展・増悪させます。
■無呼吸に伴なう頻回の覚醒反応は自律神経異常を引き起こします
低酸素血症で乱された交感神経活動の亢進は、頻回の覚醒によりさらに交感神経活動を悪化させます。一般的には睡眠中は副交感神経が優位になるものです。昼間も夜間も、何時も戦闘モードでは、心臓はばててしまいます。
心不全に対する薬物治療が行なわれている上での無呼吸の治療には以下のようないくつかの選択枝があります
■CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法:鼻マスク法)治療
心不全患者さんでは、鼻マスク治療を行なっても、装着の不快感や違和感があり、治療の継続が非常に困難であることが多い。米国では、心不全患者さんにも積極的にCPAP治療あるいはBiPAP治療を行なっている。一般的にCPAPの継続使用率は、昼間の過眠など自覚症状を持つ閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんに高いことが言われている。
■酸素吸入療法(経鼻式)
■心臓移植
■薬物療法
心不全に伴なう中枢性睡眠時無呼吸症候群に対する夜間の酸素療法の効果は
無呼吸低呼吸の回数を減らします
■睡眠構築の改善(睡眠時間の延長、深い睡眠の増加、覚醒指数の改善)を認めます
■低酸素血症の改善を認めます
■昼間の運動耐容能(左室収縮能の改善)が改善します
■交感神経活性亢進の抑制や尿中ノルエピネフリンの低下をもたらします
以上より、心不全患者さんに対する睡眠時無呼吸症の酸素療法は
■左室の構造(リモデリング)に良い影響を与える
■QOLの改善が得られる
■入院頻度と死亡率を減少する
ということが認められてきており、今後積極的に行なわれる治療の一つと考えられてきています。
但し、医療経済的には心不全が悪化して入院したときの治療を含めて考えると安いとはいわれていますが、現実問題として毎月の医療費が結構かかりますので、主治医の先生と良く相談してみて下さい!