今までは「昼間に眠い」といえば「根性が足りない」といわれた方も多くおられると思います。睡眠時間が不足している場合などは、気合と根性で対応できるときもありますが、中枢性過眠症では昼間の覚醒に必要な脳内物質が減っているため、根性では乗り切れません。

睡眠時無呼吸症候群は「昼間の眠気」で有名になりましたが、実際には約50%の方しか昼間の眠気は出現しません（クリニックのデータ）。
しかし、20歳から59歳の勤労者を対象に、昼間に眠気を生じる方かどうかを昼間の眠気に対するアンケート調査では、男性で7.2%、女性で13.3%との報告もあります。睡眠時間が6時間以下では6時間以上に比べて昼間の眠気が3‐4倍高くなり、抑うつ症状のある方では2‐3倍高くなります

睡眠不足症候群
睡眠時間は個人差がありますが、個人の適正な睡眠時間に対して不十分な睡眠時間しか取れておらず、休日などに良く寝ても昼間の眠気が取れない状態が3ヶ月以上続いている状態です。例えば、睡眠時間が8時間必要な方が6時間の睡眠時間で過ごしている時には、やはり睡眠不足症候群になることがあります。多くの場合2週間位にわたって、睡眠時間を適切に調整する必要があります。

不眠症
入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、再入眠障害などがあります。睡眠の質の低下もありますが、睡眠時間全体で見ると短い時間の睡眠になります。

長時間睡眠者
睡眠時間が10時間以上ないと昼間の眠気が取れない人のことです。

睡眠呼吸障害（睡眠時無呼吸症候群など）
レム睡眠行動障害
むずむず脚症候群
周期性四肢運動異常
睡眠中に周期的に足関節を背屈させる短い不随意運動（持続0.5〜10秒）を生じる病気です。むずむず脚症候群に合併して生じる時や加齢により生じている場合が多く見られます。50歳以下では５％位しか出現しませんが、高齢者では50％位の方で時間当たり5回以上の異常運動を認めます。1時間当たり15回以上の足の異常運動がある場合に病名をつけるものの、足が動いても昼間の眠気や下肢の倦怠感が出ない場合には臨床的には問題となりません。原因は不明ですが、むずむず足症候群との合併の場合、むずむず脚症候群にドパミン作動薬を使用すると改善する場合が多く見られ、脊髄視床路の障害が疑われています。

ナルコレプシー
思春期頃より発症する「日中の過度の眠気」と「情動脱力発作」が主症状の疾患です。 日中の眠気の特徴は、商談中や、デートの真っ最中、試験中など通常では考えられない状況でも寝てしまいます。しかし、10−20分の短時間の睡眠でリフレッシュ感が得られ、眠気が一時的にきれいに消失します。しかし、3−4時間位でまた我慢できない程の強い眠気に襲われます。
情動脱力発作とは、笑ったり、喜んだりする感情の高まりのときに、膝の力が抜けたり、しゃべれなくなったり、まぶたが下がったり、呂律が回らなくなったりします。他には、入眠時幻覚や睡眠麻痺（金縛り現象）を伴うこともあります。原因としては脳内の覚醒物質であるオレキシンが有意に減少しているためといわれています。

診断には睡眠ポリグラフ検査と反復睡眠潜時検査が必要です(当院で検査できます)。採血検査ではHLA検査が有用な場合があります（健康保険には採用されていません）。
近年は、安全な中枢神経刺激剤が使用できますので、仕事や学業に差し障りのない生活が可能になってきています。

特発性過眠症
日中の眠気はナルコレプシーと同じですが、睡眠ポリグラフ検査では睡眠構築は正常です。ナルコレプシーと異なり、日中の居眠りを1時間位とってもリフレッシュ感がでません。最近、脳内の覚醒物質であるヒスタミンが減少していることが指摘されています（2009、Nishinoら）。ナルコレプシーに比べて中枢神経刺激剤の効果が弱いといわれています。

睡眠相後退症候群
入眠時刻が毎日午前3時とか4時位に遅れてしまい、社会生活上では午前中に耐えがたい眠気に襲われてしまう状態です。ずれた時間のまま、睡眠時間を7−8時間取っているものは昼間の眠気はでません。
交代勤務者睡眠障害
非24時間睡眠覚醒障害

昼間の強い眠気を伴う疾患では、は睡眠習慣の改善で改善する場合もありますが、上記のような多くの疾患を考慮しながら診断や治療に当たる必要性があります。昼間の眠気では仕事や学業に支障をきたすことも多く、日常生活では自分の持てる100%のパワーが発揮できるように早期診断・早期治療に努めてください。