気道は鼻・口に始まります。この経路で、声帯までを上気道といい、声帯より末梢気道を下気道といいます。この下気道には、通常細菌や異物は認められません。 下気道にはごみ・異物・ばい菌が入ってきたことを感知・除去するシステムがあります。 太い気管支領域(中枢気道)では”咳反射”、細い気管支領域(末梢気道)では”粘液線毛輸送系”といいます。この粘液線毛輸送系は、線毛運動により、細い気管支から太い気管支へ”エスカレーター”のように働いており、異物を細い気管支から太い気管支へ運んでいるのです。太い気管支まできたら、”咳”で体外へ吐き出すようになっています。 従って、咳は本来生体防御機能として必要なのですが、何らかの原因で時として長引いてしまう咳があるのです。咳には2つの種類があります。一つは”乾性咳嗽(痰はほとんどなく、いわゆる空咳です)”、もう一つは”湿性咳嗽(痰を伴なう咳です)”です。
胸部レントゲン写真や肺機能検査に異常がないのに、8週間以上咳が続くことを言います。
■ 咳喘息 ■ アトピー咳嗽 ■ 副鼻腔気管支症候群 (気管支拡張症・副鼻腔炎) ■ 風邪症候群後遷延性咳嗽 ■ 非定型肺炎後の慢性咳嗽 (マイコプラズマ・クラミジア肺炎あるいは気管支炎) ■ 胃食道逆流 ■ タバコ気管支炎 ■ 降圧剤の使用 (ACE阻害剤、β受容体遮断薬) ■ 心因性咳嗽 ■ 喉頭アレルギー (下気道ではありませんが) ■ その他
■2週間以上の咳嗽では、まず肺結核を除外する必要がありますので、 気になる方は胸 部レントゲン写真や喀痰検査をしてもらってください。 ■咳嗽が各種治療によっても治らないときには、中心型肺癌、気管 支結核、気道内異物などの病気がひそんでいることもあるので、 場合によっては気管支鏡検査が必要になることもあります。 特に日本でよくみられる3つの疾患について、以下に示します。
[ 概 念 ] ■中枢気道から末梢気道に至る広範囲に、アレルギー反応に関与す る好酸球が出現しています。 ■主体は気道平滑筋の収縮です。咳受容体の感受性はありません。 [ 症 状 ] ■原則的に乾性咳嗽 咳嗽のでる時間帯:ほとんど夜間(特に、就寝時、夜中から早朝、起床時などに多い) 咳嗽の誘因 冷気や暖気の吸入時、受動喫煙、線香の煙、香水・化粧品、会話、電話、運動など ■喘鳴(ヒーヒー、ゼーゼーなど)や呼吸困難発作は認めない ■アトピー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚 炎、蕁麻疹)の家族歴が認められる(40-100%) [ 検 査 ] ■聴診:呼吸音は正常。しかし、頑張って息を吐いてもらうと咳が 出やすい ■胸部XP:異常なし ■血液検査:アトピー素因の検査(末梢好酸球数、血清IgE値、特異 的IgE抗体が陽性のことが多い) ■肺機能検査:肺活量や1秒量、1秒率は正常。末梢気道障害の指標 が低下することがある ■気道過敏性:軽度亢進のみ ■気道可逆性:軽度認められるのみ [ 治 療 ] ■気管支拡張剤 ■ステロイド剤(吸入、経口剤) [ 予 後 ] ■長期管理:咳喘息患者さんの約30%(10-40%)が3年くらいで 気管支喘息に移行することがある ■吸入ステロイド剤の早期導入、長期管理が必要
[ 概 念 ] ■アトピー性疾患を持っておられる方、過去にもっておられた方及び、今後発症する可能性のある方に認められ、8週間以上続く乾性咳嗽を示す。 ■咳喘息と異なり、中枢気道に異常を認める病気です [ 症 状 ] ■喘鳴なし、呼吸困難なし ■咳嗽:夜間(特に就寝時、夜中から早朝、起床時などに多い) 冷気や暖気の吸入、受動喫煙、エアコンの風、線香の煙、化粧・香水、電話、運動など ■聴診:異常なし [ 検 査 ] ■血液検査:アトピー性素因(末梢血好酸球数、血清IgE値、特異的IgE抗体)が陽性 ■肺機能検査:異常なし ■気道過敏性:認めない ■咳受容体感受性の亢進を認める [ 治 療 ] ■抗アレルギー薬(ヒスタミンH1遮断剤) ■ステロイド吸入薬あるいは内服薬 [ 予 後 ] ■長期的治療は不要である。咳喘息のように、気管支喘息に移行することはない。
[ 概 念 ] ■慢性副鼻腔炎と気管支拡張症を伴ない、湿性咳嗽を示す慢性咳嗽です。 ■粘液線毛輸送系に最も大事な線毛細胞の線毛運動が障害されている場合や、 ■小児期の肺炎の後遺症などによって生じることがあります。 ■びまん性汎細気管支炎 ( Diffuse Panbronchiolitis: DPB ) は副鼻腔気管支症候群の特殊型と 位置付けられています。 [ 症 状 ] ■喀痰を伴なう慢性咳嗽、運動時・労作時の呼吸困難 ■聴診:中から下肺野に肺雑音を聴取します ■アトピー性素因:なし [ 検 査 ] ■両側肺野にびまん性に粒状陰影が散在しています。 ■進行例では、気管支拡張像や下肺野のブラ(肺嚢胞) ■閉塞性換気障害(一部は混合性肺機能障害) ■肺活量は正常だが、1秒率や1秒量の低下 ■正常肺機能 ■血液ガス:低酸素血症をみとめます ■胸部CT検査 両肺野のびまん性小葉中心性粒状陰影 ■血液検査 寒冷凝集素価の高値、血清IgA高値 ■気道過敏性:なし ■咳感受性:なし [ 治 療 ] ■14員環マクロライド系薬剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が中心 [ 予 後 ] ■マクロライド少量持続療法で改善することが多いが、一部に難治性の例も認められる。
気道は鼻・口に始まります。この経路で、声帯までを上気道といい、声帯より末梢気道を下気道といいます。この下気道には、通常細菌や異物は認められません。
下気道にはごみ・異物・ばい菌が入ってきたことを感知・除去するシステムがあります。
太い気管支領域(中枢気道)では”咳反射”、細い気管支領域(末梢気道)では”粘液線毛輸送系”といいます。この粘液線毛輸送系は、線毛運動により、細い気管支から太い気管支へ”エスカレーター”のように働いており、異物を細い気管支から太い気管支へ運んでいるのです。太い気管支まできたら、”咳”で体外へ吐き出すようになっています。
従って、咳は本来生体防御機能として必要なのですが、何らかの原因で時として長引いてしまう咳があるのです。咳には2つの種類があります。一つは”乾性咳嗽(痰はほとんどなく、いわゆる空咳です)”、もう一つは”湿性咳嗽(痰を伴なう咳です)”です。
胸部レントゲン写真や肺機能検査に異常がないのに、8週間以上咳が続くことを言います。
■ 咳喘息
■ アトピー咳嗽
■ 副鼻腔気管支症候群 (気管支拡張症・副鼻腔炎)
■ 風邪症候群後遷延性咳嗽
■ 非定型肺炎後の慢性咳嗽 (マイコプラズマ・クラミジア肺炎あるいは気管支炎)
■ 胃食道逆流
■ タバコ気管支炎
■ 降圧剤の使用 (ACE阻害剤、β受容体遮断薬)
■ 心因性咳嗽
■ 喉頭アレルギー (下気道ではありませんが)
■ その他
■2週間以上の咳嗽では、まず肺結核を除外する必要がありますので、 気になる方は胸 部レントゲン写真や喀痰検査をしてもらってください。
■咳嗽が各種治療によっても治らないときには、中心型肺癌、気管 支結核、気道内異物などの病気がひそんでいることもあるので、 場合によっては気管支鏡検査が必要になることもあります。
特に日本でよくみられる3つの疾患について、以下に示します。
[ 概 念 ]
■中枢気道から末梢気道に至る広範囲に、アレルギー反応に関与す
る好酸球が出現しています。
■主体は気道平滑筋の収縮です。咳受容体の感受性はありません。
[ 症 状 ]
■原則的に乾性咳嗽
咳嗽のでる時間帯:ほとんど夜間(特に、就寝時、夜中から早朝、起床時などに多い)
咳嗽の誘因
冷気や暖気の吸入時、受動喫煙、線香の煙、香水・化粧品、会話、電話、運動など
■喘鳴(ヒーヒー、ゼーゼーなど)や呼吸困難発作は認めない
■アトピー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚 炎、蕁麻疹)の家族歴が認められる(40-100%)
[ 検 査 ]
■聴診:呼吸音は正常。しかし、頑張って息を吐いてもらうと咳が 出やすい
■胸部XP:異常なし
■血液検査:アトピー素因の検査(末梢好酸球数、血清IgE値、特異 的IgE抗体が陽性のことが多い)
■肺機能検査:肺活量や1秒量、1秒率は正常。末梢気道障害の指標 が低下することがある
■気道過敏性:軽度亢進のみ
■気道可逆性:軽度認められるのみ
[ 治 療 ]
■気管支拡張剤
■ステロイド剤(吸入、経口剤)
[ 予 後 ]
■長期管理:咳喘息患者さんの約30%(10-40%)が3年くらいで 気管支喘息に移行することがある
■吸入ステロイド剤の早期導入、長期管理が必要
[ 概 念 ]
■アトピー性疾患を持っておられる方、過去にもっておられた方及び、今後発症する可能性のある方に認められ、8週間以上続く乾性咳嗽を示す。
■咳喘息と異なり、中枢気道に異常を認める病気です
[ 症 状 ]
■喘鳴なし、呼吸困難なし
■咳嗽:夜間(特に就寝時、夜中から早朝、起床時などに多い)
冷気や暖気の吸入、受動喫煙、エアコンの風、線香の煙、化粧・香水、電話、運動など
■聴診:異常なし
[ 検 査 ]
■血液検査:アトピー性素因(末梢血好酸球数、血清IgE値、特異的IgE抗体)が陽性
■肺機能検査:異常なし
■気道過敏性:認めない
■咳受容体感受性の亢進を認める
[ 治 療 ]
■抗アレルギー薬(ヒスタミンH1遮断剤)
■ステロイド吸入薬あるいは内服薬
[ 予 後 ]
■長期的治療は不要である。咳喘息のように、気管支喘息に移行することはない。
[ 概 念 ]
■慢性副鼻腔炎と気管支拡張症を伴ない、湿性咳嗽を示す慢性咳嗽です。
■粘液線毛輸送系に最も大事な線毛細胞の線毛運動が障害されている場合や、
■小児期の肺炎の後遺症などによって生じることがあります。
■びまん性汎細気管支炎 ( Diffuse Panbronchiolitis: DPB ) は副鼻腔気管支症候群の特殊型と
位置付けられています。
[ 症 状 ]
■喀痰を伴なう慢性咳嗽、運動時・労作時の呼吸困難
■聴診:中から下肺野に肺雑音を聴取します
■アトピー性素因:なし
[ 検 査 ]
■両側肺野にびまん性に粒状陰影が散在しています。
■進行例では、気管支拡張像や下肺野のブラ(肺嚢胞)
■閉塞性換気障害(一部は混合性肺機能障害)
■肺活量は正常だが、1秒率や1秒量の低下
■正常肺機能
■血液ガス:低酸素血症をみとめます
■胸部CT検査
両肺野のびまん性小葉中心性粒状陰影
■血液検査
寒冷凝集素価の高値、血清IgA高値
■気道過敏性:なし
■咳感受性:なし
[ 治 療 ]
■14員環マクロライド系薬剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が中心
[ 予 後 ]
■マクロライド少量持続療法で改善することが多いが、一部に難治性の例も認められる。